江戸に続く鼈甲メガネ 変わらない技術と 変わり続けるものづくり。 江戸に続く鼈甲メガネ 変わらない技術と 変わり続けるものづくり。

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対面販売のこだわり 対面販売のこだわり
対面販売のこだわり
長く使う鼈甲眼鏡だからこそ、長く通っていただけるお店でありたいと考えています。
対面販売のこだわりアロー

対面販売のこだわり

現在ご予約制とさせて頂いております。

多くの商品がインターネットで求めることの出来る時代ではありますが、大澤鼈甲では対面販売を基本として、弊社製作の鼈甲眼鏡をご紹介しております。様々なタイプの眼鏡をご覧頂きながら、鼈甲眼鏡の専門店としてお客様が長くご愛用出来るお気に入りの眼鏡選びのお手伝いをさせて頂きます。
鼈甲の良さや取り扱い、其々の眼鏡の特徴をご説明させて頂きながら、最良の一点をお勧めしております。千駄木駅に近く、工房併設の店舗にて、鼈甲眼鏡、アクセサリーや小物を取り揃えております。

対面販売のこだわり

自然光が降り注ぐガラス張りの1階店舗に、様々なタイプの鼈甲眼鏡をご用意しております。奥の別室にはゆったりとお寛ぎ頂けるスペースを設けております。
視力測定機器も備えレンズの調整、測定も行っておりますので鼈甲のこと、レンズのこと、是非ご相談下さい。また、お客様の大切な鼈甲眼鏡のメンテナンスやレンズの入れ替え、ネジの点検、破損の場合の修理など、ご愛用の鼈甲眼鏡に関するご相談を承れますよう、お気軽に立ち寄り頂ける店作りを心掛けております。

対面販売のこだわり

眼鏡は、その方のイメージを決める重要な小物のひとつ、お使いになる方を語るものです。鼈甲眼鏡はデザイン、タイプも様々です。一見同じように見える眼鏡でも、枠の太さやカッティングの違いで、見た目の雰囲気、醸し出す印象は大きく変わります。
また、お顔と眼鏡のサイズ感をきちんと合わせること、正確に採寸し、見極めることが良い鼈甲眼鏡をつくる基本となります。

対面販売のこだわり

大澤鼈甲では、お客様のご希望を伺いながらデザイン選定のお手伝いをさせて頂き、丁度良いサイズの鼈甲眼鏡を製作致します。ご納得を頂けるオーダーメードの1点をお作りすることも、こだわりの対面販売だからこそ、ご提供できるサービスです。

対面販売のこだわり
とじる
工房写真館
工房写真館
店舗併設の工房は、一心に鼈甲眼鏡を作る職人たちの鼈甲を削る音、工具を動かす音が響きます。
工房写真館アロー

工房写真館

  • 一期一会の作業、熟練の手に心を込めて

    一期一会の作業、熟練の手に心を込めて

  • 工房に鼈甲を削る音が響く

    工房に鼈甲を削る音が響く

  • 一つ一つの作業は、丁寧に素早く進められていく

    一つ一つの作業は、丁寧に素早く進められていく

  • 貴重な白甲の加工、必要な厚みになる様に素材を重ね合わせる

    貴重な白甲の加工、必要な厚みになる様に素材を重ね合わせる

  • 鉄製の工具で鼈甲に熱を伝えながら作業は進む

    鉄製の工具で鼈甲に熱を伝えながら作業は進む

  • 常に鉄板が焼かれている工房は、夏は厳しい暑さとなる

    常に鉄板が焼かれている工房は、夏は厳しい暑さとなる

  • 机の上は、一番効率の良い置き方に自然と並ぶ

    机の上は、一番効率の良い置き方に自然と並ぶ

  • 鼈甲の状態を見極め確認しながら、作業を行う

    鼈甲の状態を見極め確認しながら、作業を行う

  • 確実な作業の為の打合せ

    確実な作業の為の打合せ

  • 何気なく見えても難しい作業、熟練の技が光る

    何気なく見えても難しい作業、熟練の技が光る

  • 使い込まれたヤスリ、どれも大切な工具

    使い込まれたヤスリ、どれも大切な工具

  • 熱した鉄の工具に切り分けられた鼈甲を挟む

    熱した鉄の工具に切り分けられた鼈甲を挟む

  • 鼈甲の美しさを引き出す、イメージ通りの仕上がりまであと少し

    鼈甲の美しさを引き出す、イメージ通りの仕上がりまであと少し

  • どの工程にもとても重要な意味がある、気の抜けない作業

    どの工程にもとても重要な意味がある、気の抜けない作業

  • 焼いた鉄製工具の熱を鼈甲に伝え仮付けしてゆく

    焼いた鉄製工具の熱を鼈甲に伝え仮付けしてゆく

  • 年季の入ったリズミカルな動きにはムダがない

    年季の入ったリズミカルな動きにはムダがない

  • 甲羅の切り出しは、素材を活かし切る覚悟で望む

    甲羅の切り出しは、素材を活かし切る覚悟で望む

  • プレス前、仮付けした枠に水分を含ませる

    プレス前、仮付けした枠に水分を含ませる

  • 大きなヤットコは両側から鼈甲を挟んで鼈甲に熱を伝える

    大きなヤットコは両側から鼈甲を挟んで鼈甲に熱を伝える

  • 金具の取り付けは、テンプルの開き具合や角度を見極めて

    金具の取り付けは、テンプルの開き具合や角度を見極めて

  • 静かな中にも張り詰めた空気が漂う

    静かな中にも張り詰めた空気が漂う

  • 焼いた鉄板に水をかけ、蒸気を起こしながら温度調整も行う

    焼いた鉄板に水をかけ、蒸気を起こしながら温度調整も行う

  • 長年のご愛用品を丁寧に修理

    長年のご愛用品を丁寧に修理

  • 長く使われている糸鋸、柄は何度も交換された昔からの道具

    長く使われている糸鋸、柄は何度も交換された昔からの道具

  • 工房の随所に職人それぞれの工夫が凝らされている

    工房の随所に職人それぞれの工夫が凝らされている

  • 素早く間違いなく、作業が進められる様に工具立ても工夫

    素早く間違いなく、作業が進められる様に工具立ても工夫

  • 使う人を思いながら、人の手によるモノづくり

    使う人を思いながら、人の手によるモノづくり

  • 工具は江戸時代のものとほとんど変わらない

    工具は江戸時代のものとほとんど変わらない

とじる
江戸時代から珍重されてきた鼈甲眼鏡モノ語り 江戸時代から珍重されてきた鼈甲眼鏡モノ語り
江戸時代から珍重されてきた
鼈甲眼鏡モノ語り
ファッションディレクター・スタイリスト 青柳光則氏によるインタビュー記事
江戸時代から珍重されてきた鼈甲眼鏡モノ語りアロー

日本の伝統工芸を身につける

鼈甲の眼鏡は老舗百貨店でも特撰や高級品として扱われているが、なぜそんなにモテはやされるのかは・・・全くといっていいほど知られていない。そこで様々な角度から鼈甲の魅力を江戸鼈甲の老舗大澤鼈甲2代目社長の大澤健吾さんに尋ねてみた。聞けば聞くほどにハマる鼈甲の魅力は奥深い。
インタビュー・文/青柳 光則

日本伝統工芸を身につける

青柳光則(あおやぎみつのり)青柳光則(あおやぎみつのり)
ファッションディレクター・スタイリスト
(株)スタイル社「男子専科」編集部を経て独立。雑誌のファッションページをはじめ、アパレル流通関係の広告やカタログの企画・構成、スタイリング、執筆、講演など幅広く活動中。
近年は「お洒落道場」の師範代として全国を行脚中。著書に「男のお洒落道・虎の巻」がある。
大澤健吾(おおさわけんご)
大澤鼈甲株式会社代表取締役
1986年大澤鼈甲入社、鼈甲眼鏡を伝統技術と天然素材を使用したプロダクトと捉えてデザインの研究と技術革新に注力、モダンな鼈甲眼鏡を製作している。持続可能な利用を目指して、ベッ甲業界でのタイマイ養殖事業で中心的役割を担う。
大澤健吾(おおさわけんご)

Interview

  • 江戸時代から珍重されてきた鼈甲の不思議な効能

    江戸時代から珍重されてきた鼈甲の不思議な効能

    (青) 大澤鼈甲さんは鼈甲のセレクトショップと思いきや、大澤眼鏡という看板もあります。始まりは眼鏡なのですか?

    (大澤)眼鏡です。
    眼鏡の他にネックレスや、簪など幾つか取り扱っていますが、ウチはもともと鼈甲の眼鏡屋さん、鼈甲眼鏡の専門店です。

    (青) なるほど。

    (青) では眼鏡に的を絞って伺います。ズバリ鼈甲眼鏡の魅力とは?

    (大澤)眼鏡自体はフレームが主役ですが、機能としてはレンズが必要です。レンズをどういう風にフレームが支え、顔に掛けたときに違和感なく馴染むか、とてもシンプルなことですが、それがいい眼鏡の定義だと思います。ですから私たちは目に見えない部分に工夫を凝らして見え心地の良さを追求してゆくことが仕事です。そこで何よりも重要なのがフレームの素材選びです。鼈甲は徳川家康の時代から眼鏡があったといわれていますが、鼈甲の色合いは不思議と人の肌色に馴染みます。その特殊な色の奥行きは現代のプラスティックでは表現できません。また素材にタンパク質が含まれていますから肌に優しいのも特筆すべき点です。こうした効能の数々は自然が生んだものなのです。

    複雑に織り成す色のグラデーションにこそ、鼈甲の美しさの秘密があります。白甲は、柔らかな光を集めた様に優しい輝きを湛えます。複雑に織り成す色のグラデーションにこそ、鼈甲の美しさの秘密があります。白甲は、柔らかな光を集めた様に優しい輝きを湛えます。

    (青) なるほど、現代のプラスティックの様な使い方で、簪、髪留め、など身の回りのものを鼈甲を使って作ってきた歴史があった。そして今考えてみれば身につけるもの、例えば肌に付けるネックレスだとか耳かきだとか、眼鏡のようなものは、前述のタンパク質をはじめ人の体に優しい天然素材だから馴染みがいいということですね。

    (青) 出自は江戸時代に遡りましたが、一方では江戸鼈甲という言い方がありますが、一般的な鼈甲と江戸鼈甲には違いがあるのですか。

    (大澤)鼈甲は眼鏡だけでなく、簪などが江戸時代から珍重されていたということが背景にありますが、元来鼈甲は長崎から伝わり、江戸で発展した歴史があります。現代では東京都や国が指定する伝統工芸品として、親しみやすく、呼びやすいキャッチフレーズとして使われるようになったというのが正しい解釈かと思います。

    古来から世界中を旅して日本に伝わった鼈甲、いにしえ人に思いを馳せて。古来から世界中を旅して日本に伝わった鼈甲、いにしえ人に思いを馳せて。

    (青) プラスティックに比べて重さ、重量感はどうでしょう。

    (大澤)見た目よりは軽いです。もちろんハイテク素材のように軽量ではありませんが、程よい重さといいましょうか、眼鏡を掛けているときの重さは非常に心地良いものだと思います。何れにしても掛け心地が良いというのは軽さだけでは語れないと思います。つまり、ほどほどの重量感を備えたものの方が心地よく掛けられると思います。また、先ほど少し触れましたが、鼈甲の眼鏡は掛けているときの肌に対するアタリが全く違います、私も長く使っていますが、プラスティックにはない独特の触感を強く感じます。ですからリピーターの方も多いですし、何十年と愛用されている方も珍しくありません。

    (青) そうですね、僕もこちらの耳かきを長年愛用していますが(笑)よく取れる耳かきなんて代物がありますが、それは確かに良く獲れますが、耳アタリが悪いですよ。やっぱなんだかんだ痛いのです。でも鼈甲製だと違和感が少ない気がします。

    (左)yoshie inaba鼈甲ブローチは銀の蒔絵が輝きをプラス。(右)白甲を使った簪や帯留め。和装に鼈甲の奥行きの深い色が映える。(左)yoshie inaba鼈甲ブローチは銀の蒔絵が輝きをプラス。(右)白甲を使った簪や帯留め。和装に鼈甲の奥行きの深い色が映える。

    間違いだらけの眼鏡選びに喝!! 眼鏡は瞳孔に合わせる

    (青) こちらで眼鏡を見せていただくと鼈甲の色柄もそうですが、形もかなり種類があります。眼鏡を選ぶ際に、自分の好きなものを10本位選んで掛けてみると10本すべてが似合わない!!と思うことがあります。眼鏡顔という言葉がありますが、眼鏡を取ると誰だかわからなくなるというのは眼鏡がキャラクターを作り出している証ですよね。つまり眼鏡は顔の一部であり、お洒落の小道具でもある訳じゃないですか。そこで、顔が長い、眉毛が濃い、薄毛、白髪、など各々の特徴に合わせた眼鏡選びのコツはありますか?

    (大澤)ここからは私よりも店長の方が詳しいので、一緒に伺っていきたいと思います。

    (店長)鼈甲の色は様々です。一般的にお若い方は濃い色の方が似合いますが、若くても白甲が似合う方もいらっしゃいます。とはいえ、基本的に白甲はある程度お年を召された方の方がお似合いになります。と申しますのは、程よく経年したお肌にはシワとか、染みみたいなものが現れますが、白甲をはじめ、明るい鼈甲を合わせると、驚くほど美しいお肌に見えるのです。私が思うには肌の質と鼈甲の色が引き立て合っている様な印象を持ちます。女性に限らず、肌に明るさを出したい場合には、やっぱり明るい鼈甲のほうが良いようです。

    (青) じゃあ、年を取るに従ってフレームの色を明るくしたほうが良いという考え方ですね。

    (店長)そうですね、仮に白髪の方でしたら、白甲や上トロ甲を選ぶことで色のトーンがまとります。するとお顔立ちが際立って素敵だと思います。

     
    (左)オリジナルブランド「大澤鼈甲」ボストン型白甲。(右)「大澤鼈甲」ウエリントン型、明るい色はお肌映りも良く、美しい。(左)オリジナルブランド「大澤鼈甲」ボストン型白甲。(右)「大澤鼈甲」ウエリントン型、明るい色はお肌映りも良く、美しい。

    (青) ということは、仮に髪の薄い方は肌色が多くなりますから逆に濃い色の眼鏡を選んでポイントをつける、また逆にライトカラーを選んで穏やかな感じでまとめるということになりますか。

    (店長)はい、私はライトカラーをお勧めしたいですね。

    (青) 確かに明るい色合いのほうが、エレガントな印象になりますよね。
    服装でも同じようなことがいえると思います。年をとってきたら、服の色を少し派手目にした方が良いと思うのです。一般的には逆に思われがちで、年を取ったら地味な色柄にする人が多いのですが、少しモダンな色・柄・デザインを備えた服を着た方が、紳士的でエレガントに見えるものです。

    使う人を語る身の回りの小物、鼈甲眼鏡と過ごす大切な日常。愛用品のラウンド型の眼鏡、自然の鼈甲がしっくりと優しく寄り添う。使う人を語る身の回りの小物、鼈甲眼鏡と過ごす大切な日常。愛用品のラウンド型の眼鏡、自然の鼈甲がしっくりと優しく寄り添う。

    (店長)確かにそれは共通するところがありますね。

    (青) 形はどうですか。

    (店長)丸形を好まれる男性が多いですね。柔和で文学的なイメージを齎すという効果がありますから、こられたお客様の印象で幾つか選んでお勧めすることがあります。

    (青) 顔の形はどうですか、面長だとか、小顔、顔が大きいとか・・・そうした顔の特徴に合う眼鏡選びのコツはありますか。

    (店長)それは、基本的にサイズを合わせるということになるかと思います。
    面長の方だと、縦幅のサイズ、また、お顔が大きめの方には横幅を合わせた上で、フレームのサイズを瞳孔の距離と、お顔の幅と合わせる事が重要なポイントになるという考え方を持っています。

    (青) 顔の特徴に眼鏡を合わせてゆくという考え方ですね。

    (店長)お顔の幅が同じでも、瞳孔間の距離が広い方もいれば、狭い方もいらっしゃいます。瞳孔間の距離というのは、左右の黒目の間が何十ミリ空いているかということです。具体的にいいますと、瞳孔間距離が広い人用の眼鏡を狭い人がかけますと、目が中心に寄って見えてしまうのです。

    お顔立ちを考慮に入れて、図面を作製。必要であればセルシートを作って確認する。オーダーメイド、セミ・オーダーメイドも工房直結だからこそ。お顔立ちを考慮に入れて、図面を作製。必要であればセルシートを作って確認する。オーダーメイド、セミ・オーダーメイドも工房直結だからこそ。

    (青) ということは、合わせるべきは瞳孔なのですか。

    (店長)そこがポイントになります。目の瞳孔によって合う、合わないがあるわけです。つまり瞳孔によってフレームのサイズ感を変えてゆくということが眼鏡選びの基準になるわけです。お顔の幅に関しては、そのあとのことになります。

    (青) そのあととは?

    (店長)瞳孔をきっちり合わせた後に、お顔の幅がある方は、フレームの両端にある”ヨロイ”と呼ばれる部分を少し伸ばして顔の幅に合わせます。そうすることで幅を広くすることができます。また最近は手元の金具にバネを備えたものがありますが、その場合はバネを広げて対応します。また眼鏡を実際よりも狭く見せたい場合はよろいの部分を斜めにカットして、下地は広く、表面から見えるところは狭く面を取って仕上げることでバランス良く見えるようになります。

    (青) それでは、この眼鏡が良い!!となった場合、必要な部分を削ったりする事ができるということですか。

    (店長)鼈甲ですとある程度フレキシブルに形状を変える事が出来ますからそれが可能になります。ただ、限度はあります。仮にお直しで対応できない場合はお作りします。オーダーはお顔の様々な部分を採寸させていただいてよりかけやすい眼鏡作りを目指します。そこが、手作りの良さだと思うのです。

  • オーダーメイドで自分だけの鼈甲を手に入れる

    (青) へえ〜、ここに置いてあるものはひとつひとつ手作りなのですか。一本作るのに大体どの位の日数を要するのですか?

    (大澤)良く聞かれる質問なのですが、ウチはある程度分業性で進めています。単にひとつの眼鏡を作る場合は一週間位で出来上がるのですが、そこから少し時間を置いて、材料自体を寝かす、というか乾かす事が必要で、それを合わせると、1か月位は掛かります。

    オーダーメイドで自分だけの鼈甲を手に入れる

    (青) なるほど。オーダーで作る場合、いくつか形のサンプルがあって、まずはそのサンプルを掛けてその人の顔の形にあわせてここは広げて、ここは狭めるといった具合に調整してゆくのですか?

    (大澤)端的に言えばそうですね。オリジナルの形が幾つかあります。それに基づいて鼈甲をパーツ毎に作り、それを眼鏡の形にする手順で進めます。ですからオーダーは各々のパーツをお客様に合わせてひとつずつ作ります。前述の良い眼鏡の定義のところで触れましたが、やはり長く使うというのが鼈甲眼鏡の最大の魅力だと思いますから。例え壊れたとしても、修理が可能ですし、例えば父親や祖父が使っていた鼈甲の眼鏡を譲り受けたとしても素材が劣化しませんから、次に使われる方のサイズに合わせてお直しすることができます。

    (青) なるほど素材が劣化しない!!それは凄いですね。

    土台がしっかりしていれば、破損した箇所を新たに甲羅からつなぎ合わせて修復が出来る。 土台がしっかりしていれば、破損した箇所を新たに甲羅からつなぎ合わせて修復が出来る。

    (大澤)勿論、長く使っていれば、鼈甲が肌の油を吸って表面に曇りが生じますが、それを磨き直して最初の状態に近づけたりして、出来るだけ元どおりに再生します。

    (青) 鼈甲はメンテナンスをしながら長く使えるということですね。ある意味では今の時代に合っているのでしょうね。現在、洋服のサイズやディテールを直すリフォームが流行っています。それが、最近では家具の方にまで発展しはじめているという話を伺いました。いい椅子は革が上質だから、使うほどに革がいい具合に経年変化してくるじゃないですか。例えば飼い犬が椅子の革を噛んでしまい、中のクッションが出たり・・・。それを修繕して欲しいという依頼が多いそうです。つまり、いいものを長く使っていくというヨーロッパ的な価値観が、日本でもようやくめばえてきたといえます。とはいえ、昔の日本人は物を大切に使ってきましたから、元来そういう資質はあったと思いますがね。
     拙書にも書いていることですが、テーラードジャケットの袖口にボタンが付いていますが、本来、このボタンは開くのです。しかし、日本で普通に売っている既製品は開かないものが多いでしょ。これを業界では開き見せと言いますが、ヨーロッパのテーラーメイドは袖口に4つボタンがあったら4つ開くのが珍しくないのです。しかし、イギリスのテーラーメイドの中には全部が開かない仕様を奨励しているところがあるのです。手に近い手前の2つは開いても奥の2つは開かない。何故そんなことをするのかと聞くと、服が次の人に渡った時に袖丈を直しやすいようにしているというのです。つまりイギリスのテーラーメイドは次の人の手に渡ったとき、どうしたら上手く直せて長く着ていけるのかということを前提にもの作りをしているのです。日本では考えられないことですが、50年〜60年つづく定番の生地が、まだ在庫として遺されているのです。極端なことを言えば、60年前のスーツを譲り受けたとしてもまた、自分のサイズに直して着るということが可能なのです。そういうことがこの、鼈甲の眼鏡に通じるのではないでしょうか。

    (大澤)はい、通じていますね。

    (青) サスティナブルという言葉を最近よく耳にしますが、今はいいものを長く使うという時代がまた戻って来たといえますね。

    長く使っていると、鼈甲素材の水分が減り、枯れてくる。修理は性質の違う鼈甲素材をつなぎ合わせる為難しい。職人が慎重に状態を見極めながら行う。 長く使っていると、鼈甲素材の水分が減り、枯れてくる。修理は性質の違う鼈甲素材をつなぎ合わせる為難しい。職人が慎重に状態を見極めながら行う。

    素材の特性を生かした鼈甲眼鏡の多彩なバリエーション

    (青) フレームのデザインは、昔から続いているオーセンティックな定番の形もあるのでしょうが、最近はデザイナーとのコラボレーションもあるのですか。

    (大澤)私がこの業界に入ったとき、フレームのデザインは基本的なものしかなく、バリエーションが少なくて、しかも使っていたデザインが、そもそも気に入りませんでした。ですからまずはそこを変えたいという思いから色々なデザインを参考にして新しいデザインを模索してきました。今では眼鏡のデザイナーにオリジナルデザインを依頼したり、主流になるデザインを作り出しているメーカーとコラボレーションして、今の時流にあったデザインを提案しています。

    (青) デザインごとに幾つかブランド分けされているようですね。

    (大澤)今扱っているのは、「大澤鼈甲」、「KUAI」,「カメマンネン」、「yoshie inaba(ヨシエイナバ)」の4ブランドです。

    大澤鼈甲 KUAIF KUAIC YOSHIE INABA Kame ManNen

    (青) yoshie inabaはデザイナーものですね、レディスですか。

    (大澤)レディスを意識していますが、男女兼用で掛けられるデザインです。デザイナーの稲葉賀恵さんの美意識を眼鏡にインスパイアした、弊社オリジナルブランドです。

    (青) ブランドのそれぞれに特徴があると思いますが・・・。

    (大澤)「大澤鼈甲」は鼈甲の王道を行く、ベーシックなデザインで、あくまでも鼈甲を鼈甲らしく掛けたいという方に向けて作っています。つまりこれぞ鼈甲と呼べるものです。

    社名を冠したブランド「大澤鼈甲」のAM51型、鼈甲の重厚感が白甲に深みを与える。滑らかな掛け心地で肌に自然に馴染む。 社名を冠したブランド「大澤鼈甲」のAM51型、鼈甲の重厚感が白甲に深みを与える。滑らかな掛け心地で肌に自然に馴染む。

    (青) 確かに佇まいが違いますね。光沢と透明感が桁違い!!しかし、天然素材は凄いですね。

    (大澤)江戸の昔に遡りますが、最初に鼈甲で眼鏡を作ると考案された方はある意味偉人です。

    (青) 次は、「KUAI」ですね。

    (大澤)KUAIは2010年に立ち上げたものですが、「大澤鼈甲」のように重厚なモノづくりではなく、もう少し若い世代の人たちを意識してモダンとカジュアルが融合したようなデザインを提案しています。つまり新しい世代のお客様を対象に鼈甲の魅力を訴求したいのです。ですから、価格的にも少し抑えめに設定して、掛心地を更に追求しています。例えば丁番の部分を更に工夫してベーターチタンを使い、バネを生かした軽快な掛け心地を提案しています。

    オリジナルブランドのKUAIから、人気シリーズの「KUAI F」 写真はKUF-009。 オリジナルブランドのKUAIから、人気シリーズの「KUAI F」 写真はKUF-009。

    (青) デザイン性が高くて、確かに「大澤鼈甲」のものと比べるとモダンな印象ですね。 なるほど、鼈甲の面積や配分を少し変えているのですね。

    (大澤)こちらが最初に作った「KUAI」ですが、ご覧の通り薄く作っていますが、チタンのフレームを鼈甲の裏にはめ込む事によって強度を持たせています。これは薄くなるとしなる鼈甲の特性を活かしてできたものです。表は鼈甲ですが、チタンのシートを張り、様々な薄さの調整など、試行錯誤の末にできたものです。色々とチャレンジしてきましたが、それがきっかけとなって多くのデザインが生まれ、進化してきたという歴史があります。

    (青) そうすると「大澤鼈甲」は60代からで「KUAI」は40代からというポジションといえましょうか。

    (大澤)そうですね、その辺りがターゲットとして意識しているところです。

    (青) yoshie inabaは最近でいうところのジェンダレス・エイジレスですね。

    「yoshie inaba」 鼈甲にカラーコートを取り入れて、ベーシックな中にもシャープな印象を。 「yoshie inaba」 鼈甲にカラーコートを取り入れて、ベーシックな中にもシャープな印象を。

    (大澤)世の中の風潮としてそういう流れがありますから、年齢も性別も問いません。

    (青) では「カメマンネン」は。

    (大澤)その名のとおり、デザインはクラッシックです。カメマンネンは福井のメーカーのブランドで、良い眼鏡を長く掛けられるという意味合いで名付けられました。弊社ではオリジナルデザインを生かし、素材に鼈甲を使った製品を販売しています。

    「Kame Mannen X 大澤鼈甲」 アンティークの雰囲気が優しい印象の鼈甲フレーム。 「Kame Mannen X 大澤鼈甲」 アンティークの雰囲気が優しい印象の鼈甲フレーム。

    (青) こちらは年齢層というよりも、趣味性が強いですね。これはテンプルの部分だけを鼈甲にしているのですね。確かに嗜好性が高い!!しかし、デザイン的なバリエーションとしてもこれだけ揃っていれば十分ですね。プラスオーダーもあるということですから。
    それからオーダーについてですが、これらのラインナップをベースに、ここをもう少しこうする、或いはこの部分をこう変えて欲しいということが可能になるのですか。

    (大澤)勿論です。あと、色を継いだりすることも出来ます。

    (青) コンビネーション?

    (大澤)はい、例えば白甲にもっと濃い色を枠の中に混ぜるということもできます。

    (青) 上が白で、下が黒とか。オーダーで作るというのは形に限らず、鼈甲の色柄を自由に組み合わせることができるのですか?例えば白と、トロ甲、中トロ甲を組み合わせてくれとか。

    (大澤)フロントとテンプルの色を変えたりするのも可能です。

    フロントとテンプルの色を変えたりするのも可能です。

    (青) シャツでいうところのクレリック、それはいいねえ〜。まるまるオーダーで作るとどのくらい時間が掛かるのですか。

    (大澤)ほかのオーダーと変わりませんが、通常ですと3か月~3か月半くらいです。

    (青) オーダーもそうだけど、ご紹介頂いた「大澤鼈甲」、「カメマンネン」、「KUAI」は全部自社工房で作っているのですか。

    (大澤)はい、ウチで作っています。

    (青) yoshie inabaも?

    (大澤)はい、yoshie inabaも自社工房です。但し、金具の部分は作れないので、福井県の方にお願いして作って貰っています。

  • これぞ伝統工芸のなせる技、鼈甲を切る、貼る、削る

    (青) ということは、まずフレームを作る場合、鼈甲を加工するところからはじまる訳ですか。

    (大澤)はい。なかでも難しいのは素材選びです。選んだ素材のなかから更に甲羅の一部、この部分のこの色・柄だけを選んで作ろうとする訳ですが、そこが難しいところです。

    (青) じゃあ、この甲羅を使って、この部分で何をつくるか頭に描いて素材選びをしているのですね。つまり頭に型紙が入っていて、その型紙に合わせて、生地をとって行くと。

    (大澤)そうです。甲羅から、切り出して甲羅同士を張り合わせてゆきます。

    (青) これを何枚も重ね付けするのですね。重ね付けは熱処理?

    (大澤)水と熱だけで圧縮して付けます。甲羅自体に膠の成分が含まれていて、その熱によって少しだけ素材が溶け出して、材料自体がくっ付くのです。それが鼈甲の特性であり、技術の特徴です。

    (青) ひとつの甲羅から何本位眼鏡が取れるのですか。

    (大澤)これが非常に難しくて、ひとつの甲羅でも使えない部分が多い甲羅もあリますし、また甲羅の大きさの他、厚みによっても違いますから一概には言えないですね。

    鼈甲の中でも大変貴重な白甲、ここまでの下処理にも時間と手間が掛かる。 鼈甲の中でも大変貴重な白甲、ここまでの下処理にも時間と手間が掛かる。

    (青) 例えば、白甲はどうですか。

    (大澤)白甲は甲羅の周りに付いている爪と呼ばれる縁の部分を使っています。それを真ん中から上下に割いてその裏側の黄色い部分だけを取るのです。眼鏡に使える部分というのは、1頭の中に4パーツしかありません。ですからこの白甲が一番希少性の高いものになります。また、作り方に関しても高度な技術が必要ですから一番高額になります。

    (青) では、天然の甲羅のどの部分を使ってどのパーツを作って行くのかという素材の吟味から始まり、それを切り出して、強度を出すために何枚かを水と熱で張り合わせ、眼鏡の形にしていく訳ですね。これは、大変な作業だなあ。

    (大澤)手作業の部分もありますが、伝統工芸といっても眼鏡なので工業製品としての捉え方で一部は機械を取り入れて精度を高めています。

    (青) なるほどね。職人さんは熟練工でないと無理ですね。

    (大澤)そうですね、熟練した技とセンスが問われます。

    伝統的工芸品にも新しい技術を取り入れながら時代に合ったものを作るため工程の一部に機械を導入している。 伝統的工芸品にも新しい技術を取り入れながら時代に合ったものを作るため工程の一部に機械を導入している。

    (青) なるほど、型紙があっても最終的には削る感覚は自分自身の勘だからね。
    ものには愛用品と実用品があると思いますが、鼈甲は絶対的な愛用品ですね。愛用品というのはそういった手作業の味が不可欠だから。

    (大澤)そうですね。機械を取り入れていますが、最終的な仕上げは人の手によって、その人の感性がかなり吹き込まれてできあがりますから一つ一つが異なる表情があって面白いですよ。模様ひとつ取っても同様のことがいえます。甲羅はそれぞれ違いますから。ここは白甲の単色ですが、これなんかは少し違って、グラデーションのような景色が見えます。

    (青) 確かに!全然違いますね。そういわれるとこっちの方が濃いですね、ただこうやって見るとほとんど気にならないですね。これも同じ白甲を混ぜているのですか。

    (上)2~3ミリにも充たない甲羅を重ねて眼鏡の厚さにする為、色の重ね方に注意して張り合わせる。(下)茨甲の眼鏡、表から見た時に飴色が綺麗に残っている。自然の素材を生かす生地取りに神経を使う。 (上)2~3ミリにも充たない甲羅を重ねて眼鏡の厚さにする為、色の重ね方に注意して張り合わせる。(下)茨甲の眼鏡、表から見た時に飴色が綺麗に残っている。自然の素材を生かす生地取りに神経を使う。

    (大澤)はい、元々の甲羅に茨布(バラフ)といいますが、黄色いところと焦げ茶のところが初めから混ざっています。それが、眼鏡になったとき、この部分を使うと、ちょうど左右に模様が綺麗に別れ、全体のバランスが良く作れるのではないかと甲羅を切り出すのです。この斑を活かすには、裏に斑を持ってきてしまうと、色が濃くなってしまうので、斑の裏には少し大きめの白い甲羅を持って来て貼り合わせるのです。つまり色が透き通るようにしているのです。斑の下に斑を持って来てしまうと、出来た眼鏡は黒くなってしまいます。素材を光にかざして、どうやれば色が出るかを見極めています。表の鼈甲の模様を生かすために、後ろのところに透けるような色を持ってくるというのは一般的には全く知られていません。

    (青) 素材の組み合わせを工夫して同じような配色に作っていくということですね。因みにこれは、何枚貼り合わせているのですか。

    (大澤)多くて3,4枚ですかね。大体2枚位で貼り合わせる様にしています。例えばこの色で眼鏡を作るとして、私が気をつけているのは、同じ甲羅の中からひとつのパーツを作るということです。違う甲羅を入れると、収縮性が違って、後で動いたり、割れる原因になるのです。また、違う甲羅の色が入ると、色も変わりますしね。素材は生きていますからそこが重要視しなきゃならない点です。ですからできるだけ同じ一枚の甲羅の中でパーツを完成させるというのが、最大のテーマです。

    (上)こういう明るい甲羅は珍しい。甲羅の生地取りの仕方で製品の色が大きく変わる為、見極めは慎重に行う。(下)眼鏡の前枠は、2~3枚甲羅から部分ごとに分けて作り、最後に一つの眼鏡につなぎ合わせる。 (上)こういう明るい甲羅は珍しい。甲羅の生地取りの仕方で製品の色が大きく変わる為、見極めは慎重に行う。(下)眼鏡の前枠は、2~3枚甲羅から部分ごとに分けて作り、最後に一つの眼鏡につなぎ合わせる。

    (青) 出来れば一枚の甲羅で、一本の眼鏡ということですね。

    (大澤)それが出来ると理想です。なかなかそう簡単には行きませんが、なるべくそうしています。
    (青) そういう意味では、バラフの眼鏡を作るのは大変ですね。

    (大澤)出来上がってみると、思った以上に明るい色が出てしまうとか、あまり明るくならなかったという場合もあります。それが天然素材の面白いところです。“色が被っている”と僕らはいうのですが、明るい色の上に濃い色を乗せて、削って行くと、とてもいい色になるのです。その塩梅(あんばい)を見計って考えながら作るのですが、予想に反する場合があります。

    (青) なるほど、上手く出来なかったものはボツ?

    天然素材の驚くべきパワー

    (大澤)貴重な素材ですから何とか商品にはしますけれど。オーダーの場合はお客さんに納得頂けなければ作り直します。

    (青) これだけの能力が必要になるのだから一人前の職人になるには10年じゃ無理だね。

    (大澤)様々なことを含めると相当かかりますね。眼鏡を作るということと、甲羅の色のことなどを含み入れると20〜30年くらいは必要かもしれないですね。

    (青) そんな貴重なものだと掛けてみたくなりますね。

    (大澤)ちょっと、掛けてみて下さい。掛け心地が違うでしょ?

    (青) なるほど軽いね。それから素材自体に温もりがありますね。ちょっと油分があるというか、油分というと変なのだろうけど、そんな感じがあります。

    (大澤)鼈甲には水分が相当含まれています。実は甲羅の中にコアという水の入った沢山の管で構成されていて、そこが温まって曲がるのです。その構造は他の何物にも真似の出来ない独特の構造なのです。

    (青) 天然だからこそだね。

    (上)甲羅にも年輪の様な成長の後が見られる。(下)甲羅の内側には波の様な自然の模様が表れている。 (上)甲羅にも年輪の様な成長の後が見られる。(下)甲羅の内側には波の様な自然の模様が表れている。

    (大澤)鼈甲は経年すると水分が少しずつ抜けて行き、触感が硬くなります。そういう状態を業界では枯れるといいます。例えば祖父が使っていた鼈甲の眼鏡を自分が使う場合、その人に合わせてテンプルの曲げ直しをしようとしても固くてなかなか曲がらなかったりすることがあります。熱が回らなかったり、硬かったりして、天然のコアの水分が経年で蒸発し、飛んでしまうのです。そうした素材自体のリペアを含め、眼鏡のカタチを直していきます。

    (青) 鼈甲の眼鏡専門店というのは東京にはここだけですか、というより、日本にはもう殆どないんですかね。

    (大澤)いえ、そんなことはないと思いますが、自社で作って店舗を構えているところは非常に少ないと思います。

    (青) 鼈甲は現在捕獲できないと聞いています。つまり今使っている甲羅は過去のストックということになると思いますが、材料のストックにも限界があるでしょう。

    (大澤)今は輸入禁止になっていますからそこが難しいところです。私も父の代から会社を継いで、その頃からそんな問題が出ていましたが、まだ材料は残っています。
    当時、輸入禁止になるという状況でしたから、一生懸命ストックを溜めて来ました。それと、業界の歴史が長い分、皆さんのストックがそれなりにあって、融通し合いながら今でも持っているという現状があります。それでもだいぶ減ったというのが正直なところです。
    また新しい取り組みとして今、業界では石垣島で養殖事業を始めました。それが早く実用化できる様に努力しています。

    (青) 先ほどテーラードのジャケットの話をしましたが、綺麗な服というのは三位一体でできているのです。具体的にいうとディテール、シルエット、テキスタイルの三位です。なかでも服の形を作るのは型紙と生地です。ですからデザイナーは素材を思い浮かべて、デザイン画を描いて行きます。あくまでも人の身体が動いたとき、綺麗なドレープが出て、体と自然に馴染むものがベストです。つまり服のデザインは素材を熟知していないと上手くできないということです。こうした出来栄えは服のプロでなくても一目で違いがわかりますよ。鼈甲の眼鏡もそれと同じで、素材を知っているからこそ良いものが出来るのでしょうね。

    (大澤)青柳さんの著書を読ませて頂いて思ったのは、何事にもファッション性が大切だということです。眼鏡は特に顔の中心に来るものと昔からいわれていますが、ファッション性は高くなきゃいけないと思います。

    (青) 今見せていただいたものはファッション性が十分高いと思いますよ。

    「男のお洒落道・虎の巻」青柳光則 著 
									A5判 224ページ 1800円(税抜) 
                               		(問)万来舎 Tel.03-5212-4455

    「男のお洒落道・虎の巻」青柳光則 著
    A5判 224ページ 1800円(税抜)
    (問)万来舎 Tel.03-5212-4455

  • 手仕上げの技が光る珠玉の純国産

    (青) インターネットの時代になって、いま地方のショップでもECサイトでの売上と、店売りの売上が逆転して、通販6割、店売り4割程度の配分になっているところが珍しくありません。しかし鼈甲眼鏡は通販では難しいですよね。

    (大澤)通販で眼鏡を売ったことはありません。何れにしても弊社としては通販で売らないというスタンスを保っています。というのもレンズの問題がありますし、フィッティングに拘りたいですから。基本的にはご来店いただいて、納得してお買い求めいただきたいのです。

    (青) 僕はここ数年メイドインジャパンに注目しています。もう一昔以上前の話になりますが、当時は海外へ買い物に出かけました。近いところでいえばハワイとか。東京の成田空港からハワイのホノルル空港まで、行きは6時間あまりで行けます。多くのハワイ便は東京を夜発ちます。飛行機のなかで機内食を頂き、映画を見ていると、あっという間に到着するじゃないですか。つまり丁度眠くなった頃にハワイへ着くわけです。時差が18時間程度ありますから現地は朝の5時半とか6時。当然ホテルにチェックインできませんから荷物だけをホテルに預け、行くところがないからビーチで寝たりするのですが、その日は時差でボロボロです。大抵3泊4日、4泊5日程度の旅ですから帰りは機内泊で1日マイナスの計算だと中2〜3日くらいしか使えない。それでも昔はアラモアナショッピングセンター辺りに行けば、欲しいものが意外にありましたから、それでも良かったのですが、現在は殆ど欲しいものがない。というのも今の東京はなんでも買えると言っていいほど、ものが揃っているじゃないですか。買えないものが殆どないわけですよ。
    それなら時間ができたら、ぶらりと上野から東北新幹線に乗って例えば盛岡辺りまで行く。ここは海外の有名ブランドが使うツイードの産地にも近く、東京では買えないものに出会えます。新幹線なら予約をしなくても、ほぼほぼ好きなときに行けるじゃないですか。食べるのも安くて美味いし、ホテルもリーズナブル・・・。近い将来そういう時間の使い方をする人たちが増えるのでは・・・と思っています。地方の人も同様です。東京へ遊びに来る人たちは珍しくないですが、お決まりの観光コースだけではなく、例えば谷中へ足を伸ばして大澤鼈甲へ眼鏡を見に行く、ついでに並びの名代あなご寿司を頂いてくる・・・・みたいな。特に鼈甲のように希少価値があって、しかも出かけて行かないと見れないもの、ネットでは買えないものが、これから間違いなく人気を集めるでしょう。
    今は外国製が珍しくありませんが、やはり日本の製品は信用出来ます。こちらの製品は作っている人の顔が見えるし。しかも後々リペアして貰えるとなれば申し分ないですよ。これからはそうした価値感が消費に繋がってゆくと思います。

    手仕上げの技が光る珠玉の純国産

    (大澤)先日もお取引先である銀座の老舗百貨店の方と話をしていたのですが、昔はオール甲で眼鏡を作る職人がいましたが、材料の問題と跡継ぎがいなくなって作れる人がどんどん減ってしまっていると。つまり作れるところにどんどんお客様が集中してくるのです。そう考えると余計キチンとしたものを作らなくちゃいけないと改めて思いますね。

    (青) 百貨店の特選で鼈甲の眼鏡を買いたいと思う方々の気持ちは分かりますね。ここなら間違いないという信頼の暖簾がありますから。でもその百貨店の特選売り場の方が信頼してお付き合いが続いている御社は素晴らしいですね。

    (大澤)豊富な物の中から選べるのが良い、というお客様の声があります。それも自社の2階にある工房で作っているからに他なりません。一般的な眼鏡の小売店で鼈甲の眼鏡をこれだけ揃えているところはないでしょうから。

    ジェンダレス・エイジレス時代の鼈甲

    (青) 最近は眼鏡をかける女性が増えているそうですね。

    (店長)今は若い女性も眼鏡をかける人が増えました。一昔前までは女性は余り眼鏡を掛けなかったですが、今は掛けている方がお洒落に見えます。

    (青) そうそう、元来、女性は好奇心が旺盛だから積極的ですよね。男の人はどっちかというとコンサバティブで。例えばショップでも、1階と2階がある場合、メンズフロアが2階だと男の人はなかなか上がって行きませんが、女性は2階でもドンドン上がって行くし、試着も積極的にするし。男の人は試着嫌いでしょ。拙書の場合もそうですが、イベントに来られるのは女性の方が多いですよ。だいたい「男のお洒落道・虎の巻」というタイトルにも関わらず、女性の方々に好評をいただいております。しかし、この手合いの本を女性が手に取るということ自体、世の中変わったなあ〜と思うのです。

    (大澤)現状はそうなのですか。

    (店長)女性もテーラードスーツを着ますものね。むしろ最近は着たいとか。

    (青) スーツも女性の需要が高まっています。今までレディスのテーラードを作れる職人が少なかったのですが、多くのメーカーが今、そっちに参入しないと!!というくらいの勢いです。本当に世の中変わりました。

    (大澤)へえ面白いですね。

    (青) 意識の変化は凄いですよ。今まで売れてなかったものが突然売れるようになるのですから。眼鏡然りですよね・・・あと、食もそうでしょ。今や女性でも立ち喰いそばなんか普通じゃないですか。昔は親が女性はそんなものを食べちゃいけないと教育した時代がありましたけどね。

    (店長)そういう意味においては、女性のお客様が眼鏡を掛けにおみえになる方が増えています。正にジェンダレス、エイジレスな世のなかの風潮とリンクしていますね。

    (青) 逆に女性の方なんかはこういうカタチの眼鏡が可愛いかもしれませんよね。

    明るいべっ甲で肌色が美しく見える。 明るいべっ甲で肌色が美しく見える。

    (店長)本当にそうです、こういうものが可愛いのです。男性にしか合わないと思っていましたが、可愛く似合って、こちらが吃驚しました。

    (青) そうでしょ、僕はこれ、女性に似合うと思いますよ。あっ、これいいな!

    (店長)掛けて見て下さい。お似合いになりますよ。

    (青) うーむ。やっぱりいい。鼈甲は本当に不思議な魅力がありますね。月賦で行きますかね・・・・・(笑)

    青柳さんがオーダーしたフレーム写真 「KUAI F」KUF 008 茨甲 青柳さんがオーダーしたフレーム写真 「KUAI F」KUF 008 茨甲
    青柳さんにオーダー頂いた鼈甲眼鏡をお掛け頂き記念撮影。

    青柳さんにオーダー頂いた鼈甲眼鏡をお掛け頂き記念撮影。お顔に合わせてフレームの大きさを調整して作った為、サイズがピッタリでとてもお似合いです。鼈甲眼鏡のお掛け心地、レンズも自然で良く見えるとのご感想を頂き、お客様の笑顔がうれしい瞬間です。
    ご著書の出版時期と重なり、お忙しい中にも拘わらず対談のお時間を頂きまして心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

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セミオーダーの手順
(ご購入までの流れ)
豊富なデザインの中から、お気に入りを見つける、お好きな鼈甲色で作る、ここに鼈甲ライフの楽しさがあります。
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オーダー・セミオーダーの手順
(ご購入までのながれ)

鼈甲は長くお使い頂けるものですので、店頭の様々なフレームから気になるデザイン、形状の鼈甲眼鏡をお掛け比べ頂ければ幸いです。是非お気に入りの1点をお選び下さい。眼鏡のレンズのご用意、セットまで行います。レンズ度数は処方箋をお持ち頂くか、店内にて調整のうえご希望に合ったタイプのレンズをご用意させて頂きます。

Select:店頭品から
店頭の商品の中から鼈甲枠をお選び頂き、お客様に合わせてお掛け心地よく微調整致します。
レンズをセットして、約2週間後のお渡しとなります。
テンプル(ツル)の長さだけを変更する場合には、ご納品まで約1か月半程度のお時間を頂きます。
Semi Order(セミ・オーダー):デザインを選び、お好みの鼈甲色で
店頭にあるオリジナルデザインの鼈甲眼鏡から、別の色の鼈甲をご希望の場合や、サイズアップやサイズダウン等、お客様にちょうど良いフロントサイズ、テンプルの長さに合わせて鼈甲眼鏡を製作します。見本とする鼈甲の色に出来るだけ近くなるように、甲羅を選びながらお作りしております。
①ご注文
②フィッティング
③ご納品・お掛け心地調整
天然素材のため、鼈甲の色柄は多少変わりますこと、ご了承下さい。ご注文からご納品まで、約3か月のご納期を頂いております。ご確認事項は、変更点毎に変わりますので、詳しくは店頭にてご相談をお願いします。
Order(別作):お好みの形を別作にて
お好みに合わせてデザインをおこして製作致します。
①ご注文
②デザインのご確認
③フィッティング
④ご納品・お掛け心地調整
が主な流れとなります。
見本とする鼈甲の色に出来るだけ近くなるように、甲羅を選びながらお作りしております。天然素材のため、鼈甲の色柄は多少変わりますこと、ご了承下さい。ご注文からご納品まで3~4カ月のご納期を頂いております。
詳しくは店頭にてご相談をお願いします。
Order(別作):お好みの形を別作にて
レンズの調整
お使いの眼鏡がありましたらお持ち頂き、現状のライフスタイルに合わせたレンズのお度数に調整致します。コンタクトは前もってお外しをお願いします。
また、必要に応じて眼科での処方箋をお持ち頂けます様お願い致します。

遠近両用レンズの場合には、レンズ度数が決まりましたら眼鏡を掛けた状態での瞳孔位置をお測り致します。フレーム毎に合わせたものをレンズメーカーへ発注し、一枚ずつ製作します。
レンズの調整
フィッティングとは
鼈甲眼鏡が出来ましたら、一度フィッティングの為にご来店頂き、眼鏡サイズ、テンプルの寸法がお顔に合っているかを確認し、必要な微調整を行います。修正点が無ければそのままテンプル部分のコーティングを行い、レンズをセットした後、ご納品となります。オーダーには通常約3か月程の納期を頂きます。
コーティングとは
一番劣化し易いテンプルのクリアーコーティングを行ことで鼈甲が保護され、お手入れが楽になります。
コーティングとは
コーティングについて
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アート・表現の発表の場として、レンタルギャラリーを設けたことは大澤鼈甲のものづくりに良い刺激となっています。
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「White Gallery」展示を
ご覧ください

大澤鼈甲は伝統文化を継承しつつ、より良いものづくりを追求して まいりました。この地で、新たな表現、芸術を発信する場 としてギャラリーを開館することになりました。様々な ジャンルの作品を通して、作家たちの創作への熱意をお伝えすることが大澤鼈甲のものづくりへも大きな刺激となることと考えております。

「White Gallery」
住所:〒113-0022 東京都文京区千駄木2-35-2
電話:03-3823-0023
アクセス:東京メトロ千代田線千駄木駅1番出口より徒歩2分

詳しいご案内は White Gallery のサイトをご覧ください。

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アクセス・店舗案内 アクセス・店舗案内
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アクセス

東京メトロ千代田線 千駄木駅 1番出口又は
エレベーター出口より徒歩2分
JR山手線 日暮里駅西口出口より徒歩10分

会社案内

社名大澤鼈甲株式会社
住所東京都文京区千駄木3-37-15
電話番号03-3823-0038
FAX番号03-3822-7088
E-mailshop@osawabekko.co.jp
営業日月曜日・火曜日・木曜日・金曜日・土曜日
定休日日曜・祝日・水曜日
営業時間10:00 a.m. ~ 5:00 p.m.
会社設立1959年
創業1956年
事業内容鼈甲眼鏡製造販売
鼈甲アクセサリー、鼈甲小物製造販売
代表取締役大澤健吾

特定国際種事業者
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